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先々回、病院の霊安室で、ご遺体となった患者さんに花を手向ける看護婦さんに出会い胸を打たれたという思い出話を書きました。以来、私は人の死という出来事を通して多くの方々とかかわる葬儀の仕事にも、広い意味での看護の心が必要であると社是のように口にしてきました。
それを言うたび私の脳裏に浮かぶのは、あの看護婦さんの”ナースキャップ”です。あれから何年もたち、失礼ながらお顔はおぼろげな記憶になってしまいましたが、深々とご遺体に向かって下げられた白いナースキャップのかたちを、今もありありと思い出すことができます。不思議なことにキャップをとめているピンの位置まで覚えているのです。

このように私にとって特別なものであるそのナースキャップを、最近は廃止する病院もあるという記事を読みました。それによると、ナースキャップが妨げになって患者さんを抱き起こすなどの介助がしにくく、かえって不衛生になる場合もあるとのこと。遅かれ早かれ、アメリカの例を見ても分かるように、ナースキャップは淘汰され、それとともに白衣も、より機能的なパンツスタイルのセパレート型になっていくのではないかというような内容でした。
その記事を読んで私がイメージする看護婦さんは、もう「婦」という名称では呼び得ない存在のような気がします。今は「看護士さん」はまだ一握りだそうですが、看護職すべての方が、男性女性を問わず看護師に統一される日も近いように思えます。ユニフォームや職称が変わることによって、私達が敬愛する看護職の皆さんに何かよい変化がもたらされるのであれば、それはとても喜ばしいことではないでしょうか。

時代の節目にあって、様々なことがめまぐるしいほどの速いテンポで変わっていきます。人生最後のセレモニーである葬儀の場もしかりです。お返しという決まりごとのあった御香典も、最近ではNPOなどに寄付される方も増えつつあります。
「お香典返しの贈答品は儲かるから、それでは困るだろう」とおっしゃる方がみえますが、私どもでは、お客様に「寄付をしたいのだが」とのご相談をお受けした際、それは大変いいことだと、むしろおすすめするようにしています。
こう申し上げるとちょっと格好よすぎるかも知れませんが、葬儀に関するしきたりさえもが変わりつつある世の中なのだと感じていただけるでしょう。
要は、より多くの方にとって喜ばれる方法を、慣習や文化の持つ意味合いを大切にしつつ変えていくのであれば、それでいいと思うのです。本当はナースキャップの白衣姿が見られなくなってしまうのは、私個人としてはちょっと寂しいのですけれども…。